いつまでも若さが続くわけではなく、男性なら健康に気をつけていても50歳代に入る頃から老化を意識するようになります。髪の毛が薄くなったり、白いものが目立ち始めたり、また精力が減退してきます。それでAGA外来やED外来に来られる方も増えています。
しかし、精神的に落ち込みがちになったり、アルコール量が増えたり、活動性が低下して贅肉が増えたり、性欲も低下すると言った症状も進んでくる場合もあります。こういった男性の更年期障害とも言える症状は、成長ホルモン(HGH)や男性ホルモン(テストステロン)の分泌低下が原因になっていることがあります。
通常、男性更年期障害の治療では男性ホルモンの投与を二週に1度程度注射で行われています。男性ホルモン投与の適応症は「類宦官症」でテストステロンの分泌が低下し、女性的な特徴が表にでてきている男性です。男性ホルモンの投与によって筋肉の増加、性欲の亢進、精神状態の改善が見込まれます。しかし、テストステロンの投与は下垂体にフィードバックして、自分で分泌しているテストステロンに対しては抑制をかけてしまいます。そのため相当分泌低下が著明な場合以外では、自分でテストステロンを分泌させる機能は逆に低下してしまいます。
一方、成長ホルモンの投与は、悪性腫瘍を悪化させたり、糖尿病を悪化させたりすることがあります。また成長ホルモンは自己注射しか投与方法がないため煩雑であることと、また非常に高価です。こういったマイナス面はありますが、専門知識のある医療機関で治療を行う限り、脂質代謝や非アルコール性脂肪肝炎が改善したり、また加齢による精神状態の改善がみられ、非常にメリットが多い治療です。通常薬剤の負荷テストを行い、成長ホルモン分泌不全を診断の上治療を開始します。成長ホルモン補充療法の治療効果は比較的早く現れ2ヶ月から6ヶ月程度でも確認できます。また治療中止によって起こる弊害もありません。結局、費用対効果の問題になるのですが、他の治療薬が不要になったり、アルコール消費量が減ったりすることも考えあわせると、想像以上のメリットがあります。成人の成長ホルモン補充療法は、通常保険診療の対象にはなりません。